フィールドノート(民俗野帖)

「研究ノートと書評」改め

鹿児島県立奄美図書館 島尾敏雄記念室

奄美図書館 奄美図書館島尾敏雄記念室 
 昼食に生ビールも飲んでしまったので、奄美図書館で島尾敏雄や田中一村の資料でものんびりと探そうかと、行ってみた。すると、何と1階に島尾敏雄記念室があったのだ。奄美博物館の島尾敏雄展示に少々失望していたので、これは嬉しかった。鹿児島県立奄美分館館長時代の官邸の和室も再現されていて、ビデオ番組も時々画面停止するが、観られた。
 ところで、後ほど島尾敏雄、ミホの息子、島尾伸三が、母ミホの語りをたくさん収録した『ケンムンの島』を見ると、すごい話が載っていた。
「ケンムンの声
  その夫婦には、少しおつむの弱いお手伝いさんがいました。彼女はハーガマチ(赤い髪の毛)というようなあだ名で呼ばれていました。彼女の本当の名前など誰も覚えていません。あるいはハーガマチという名だけしかなかったのかもしれません。
 夜になっても畑に出かけた夫が帰宅しないので、妻は夫を迎えにハーガマチを畑へ行かせました。
「ハゲー!!ケンムンが出た」
 と、ハーガマチは一人で帰って来ました。山道を行くと、世にも恐ろしいケンムンの声が聞こえてきて、自分を呼ぶので、怖くて逃げ帰って来たというのです。
 翌朝になっても夫が帰って来ないので、小屋で一夜をあかしたのだろうと思い、妻は再びハーガマチに弁当を持たせて迎えに行かせました。
「ハゲー!!ケンムンがまだおる」
 ハーガマチはまた怯えて、用事をしないで帰って来ました。ケンムンがそんなにいつまでも同じ場所にいるはずがなく、夫のことが心配になった妻は、自分で出かけることにしました。
 ハーガマチがケンムンの声を聞いたというあたりへ来ましたが、山の中はいつものとおり静まりかえっています。さらに夫のいる畑へ向かうと、道に夫が倒れていて、もう死んでいました。右手には血のついた鎌が握られていて、片方の足は切り落とされて膝から下がありません。
 そして、夫の死体の脇には首のないハブの胴体が転がっていました。妻はこれで全てがわかりました。夫はハブに膝をカムンと噛まれたので、毒が全身に回る前に、すぐにその場で足を切り落としたのです。そして出血を止めるために紐で切り口をしっかり結わえたのです。」
(島尾伸三『ケンムンの島』、角川書店、2000年、P95~96)
 この話が、『南島雑話』にも、小さな挿絵があったのを想い出した。
ハブに打たれ足切図
 島尾敏雄記念室にあった孫の島尾マホがイラストを描いた「名瀬ゆかりの地マップ」を見ると、図書館近くに文学碑もあるようなので、足をのばすことにした。
島尾敏雄map01

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